もっと知りたいヴォルテクス
もっと知りたいヴォルテクス#02 髙屋直生
2020.07.21
試合が終わったとき、誰よりもユニフォームが汚れていたい。ひたむきで泥臭いプレーを見てください
髙屋 直生(WTB)
入団1年目からコンスタントに試合に出場し続け、ひたむきで泥臭いプレーでチームを鼓舞する髙屋直生選手。入団3年目を迎えた現在の心境、今シーズンの意気込みなどについて話を聞いた。(取材日:2020年6月下旬)
最初から強いチームに入るのではなく、弱かったチームを自分の力で強くしていくことが楽しい!
——髙屋選手がラグビーを始めたきっかけを教えてください。
父がラグビー好きで、2003年のワールドカップの決勝戦を一緒に見て、ジョニー・ウィルキンソン選手に憧れを抱きました。野球かラグビーか迷ったんですけど、近くの小学校で練習をしているチームがあることを知り、小学4年生のときに友人4人を誘って引津リトルラガーズに入団しました。人数が少なくて試合ができるかどうかというチームでしたが、自分が強くするぞ!という野望を抱いたことを覚えています。
——当時のことで思い出に残っていることはありますか?
チームに仮入団して2週間後に試合に出ることになったんです。それも、人数が足りないからと5、6年生の試合に。ワールドカップなどを見ていたのでルールはなんとなく理解していましたし、タックルは怖かったけど、それ以外に大変さは感じませんでした。ただ、自分は足が速いと思っていたんですけど、5、6年生の中ではそこまで通用しなかったですね。当時、福岡の小学生ラグビーは強さによってA・B・Cのグループに分けられていました。4年生のときはいちばん弱いCグループでも全敗でしたが、5年生になるとCグループで優勝、6年生でBグループで優勝し、チームが強くなっていったことがとても嬉しかったですね。
——有言実行ですね。中学時代はどうされたのでしょうか。
地元に創部したばかりの伊都ヤングラガーズというチームがあったものの、もっと人数の多いチームでやるのか悩みました。けれど、小学校時代の仲間たちと一緒にラグビーをしたい、伊都ヤングラガーズを自分たちで強くしたいと考え、地元のチームで続けることに決めました。人数も少なく、一人でも欠けると練習も試合もできないチームでしたが、コーチの方々も一緒になって泥まみれで練習をしたりしました。だからこそチームメイトやコーチとはとても仲が良くて。お互いを敬い、認め合えるチームでしたね。
——その後は、福岡高校から筑波大学へ。ヴォルテクスには同じ高校・大学の選手もいらっしゃいますよね。
はい。憲さん(中靏憲章選手)や真さん(松下真七郎選手)、彰吾さん(松下彰吾選手)は、高校時代に来てくださったりしていましたね。福岡高校へ進学したのは、体格で負けていても魂でタックルにいくラグビーに感動したからですし、筑波大学に進学したのは、筑波のラグビーが好きだったということもありますが、教え方が上手で人間性も魅力的な先輩方に憧れたというのも大きかったですね。
——そして、いよいよヴォルテクスに入団することになりました。
大学2年生の頃までは卒業後はラグビーをやめるかもと思ったりもしていたのですが、3年生、4年生と怪我をしながらもラグビーを続けていく中で、まだ成長できそうだと感じたんですよね。ヴォルテクスには高校・大学の先輩もいますし、先輩方と一緒にラグビーをしたいと思っていました。
会社員としてラグビーをするからこそ、自制心やプロ意識を持つことが大切だと考えています。
——ヴォルテクスの選手の皆さんは、日中は会社員として仕事をされています。そのことについて、どのように考えていらっしゃいますか?
それが強みであり、弱みでもあると感じています。というのも、プロ契約の場合、怪我をしてしまって引退となると退社することになりますので、怪我をしないようにこのプレーはやめておこうと制御がかかってしまうこともあるかもしれません。その点、社会人チームは、自分ができるプレーを精一杯やって、怪我をしてしまったとしても、会社員として働き続けることができます。がむしゃらにタックルにもいけますし、思い切ってプレーすることができます。一方で、ラグビーができなくなっても会社に残ることができるという環境に甘えが出てしまうことは弱みですよね。食生活が乱れたり、夜更かししてしまったり、試合に負けても危機感がなかったり。そうならないためにも、プロ意識を持つことがとても大切だと思っています。
——ところで髙屋選手はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
法人営業部に所属し、法人のお客様を対象に電気の契約をしていただく業務を担当しています。お客様の状況に応じて動かなければならないため、スケジュール管理が難しい仕事ではあるのですが、お客様が何を欲しているのかをあらかじめ察知し、こちらからお声がけさせていただくことで、自分のスケジュールで動けるようになりました。
——ラグビーをしていることが仕事に活きることはありますか?
そうですね。ラグビーをしていることでお客様との会話が弾むことがあります。昨年、あるお客様が「ワールドカップを観に行く」という話をされていたので、会話にラグビーの話題を取り入れるようにしたら、ヴォルテクスのファンクラブに入ってくださり、殆どの試合を観に来てくださいました。仕事とラグビーは分けて考えていましたが、思っていた以上に繋がっているんだなと思いましたね。
——仕事に対してはどのように考えていますか?
ラグビーに対してプロ意識を持つというお話をさせていただきましたが、仕事に関してもプロの仕事をしなければいけないと考えています。仕事に取り組める時間が限られているので、決まった時間の中でいかに身体を張れるか、役に立てるかということを常に意識しています。ラグビーって自分のためというよりも周りのために、仲間のためにということを考えるスポーツですよね。仕事も人のために動けたらいいなと思っています。
外国人コーチや選手が加入し、攻撃の幅が格段に広がりました。
——昨シーズンはゼイン・ヒルトンヘッドコーチが就任し、3名の外国人選手が加入しましたね。
チョック(ゼイン・ヒルトンヘッドコーチ)も外国人選手3人も、心からラグビーが好きなんですよね。ラグビーで生きていることに誇りを持っていて、そんな姿に刺激を受けています。練習中はスイッチの切り替え方が凄いなと思います。さっきまで和気あいあいと話していたのに、ラグビーをするとなるとスイッチが入るんです。日本人選手は「暑い」とか「疲れた」とか、マイナスの要素を引きずってしまうんですけど、彼らにはそれがありません。また、チョックが入ってからは練習中の切り替えも大きく変わりました。以前はミスをするとそこで止まって話し込んでいたのですが、チョックの場合は言いたいことだけ言ったら次の練習に移るんです。さっきまでアタックの練習をしていたのに次はタックルといった感じで。一息つく暇もありません。これって、試合中を想定してのことなんですよね。試合中はミスをしても止まることなく次の動きをしなければなりませんから。
——なるほど。彼らとのコミュニケーションではどのようなことを心がけていますか?
言葉の壁はあるけれど、せっかくのチャンスですし、できるだけ英語で話しかけることを心がけています。英語はYouTubeなどで勉強していますが、少しずつコミュニケーションが取れるようになってきたと思いますね。彼らも気さくな性格なので覚えたての日本語を話してくれたりもします。練習のときも通訳がいないときは、自分を頼ってくれたりもするんですよ。今年2月にニュージーランドに遊びに行ったのですが、フィル・バーリー選手と現地で待ち合わせていろいろ連れていってもらいました。彼らはチームメイトとしてだけでなく、友達としても大切な存在ですね。
——昨シーズン、外国人選手が加入したことで試合運びに変化などはありましたか?
昨シーズンはWTBとして出場する機会が多かったのですが、フィル・バーリー選手のパスの長さやキックの判断は凄いと感じていました。空いていないと思い込んでいたところにパスが飛んできて、そこにスペースがあることに気づくんです。見えているところが違うんですよね。彼らには強さとうまさがあるので、これまでだったらパスができないような状況でもパスを出してくれます。彼らが加入したことで、確実に攻撃の幅が広がりましたし、彼らが新たに作り出してくれるチャンスに自分たちが反応できるようになることで、チームとしても成長していると感じています。
ひたむきで泥臭いプレーでチームに貢献し、信頼を得られる選手になりたい。
——コロナ禍で練習ができない日々がありました。髙屋選手はどのように過ごされていましたか?
これだけ長くラグビーから離れたのは初めてでした。ラグビーができない環境でしたので、山登りやビーチトレーニングなど、普段できないことに取り組んでいました。チームでの練習が再開し、久しぶりに仲間たちと会ったときは、この仲間が好きだなぁと心から思いましたね。現在は身体を戻している段階です。以前と同じ感覚で練習すると怪我をしてしまうと思うので、無理せず少しずつ戻していこうとしています。
——赤間新監督とはどのようにコミュニケーションを取られていたのでしょうか。
メールで課題が送られてきていました。その課題に対して返信すると、さらに深掘りできるような課題が届くんです。自分が普段考えていることを拾い上げてくださいますし、ラグビーのこと、自分のこと、チームのことを見つめ直すきっかけを与えてくださっていると思いますね。
——率直に、ヴォルテクスとはどんなチームだと感じていますか?
フレンドリーで元気で明るいチームだと思います。いい意味でみんな子どもというか、少年なんですよ。コーチやスタッフの皆さんも話しやすいですし、みんなとても仲がいいですね。
——そういえば、同じポジションの齊藤剛希選手とは大学時代に試合で戦ったことがあるんですよね。
はい。初めての対抗戦で剛希さんと対面(といめん)でした。めちゃくちゃパワフルでやっかいな選手という噂は聞いていましたが、予想通りやられてしまいましたね。当時、体重が78kgくらいでしたが、もう少し体重を増やさないとこのレベルではやっていけないということを思い知らされた試合でした。今は同じポジションですし、負けたくないという気持ちはあります。
——ポジション争いについては、どのように考えていますか?
同じWTBというポジションであっても、選手ごとにタイプが違うんですよね。ヴォルテクスには同じタイプの選手はいないと思います。首脳陣が何を求めているのかを意識して、そこに対しての自分の強みや改善点を明確にしていきたいと考えています。なので、チョックには積極的に話しかけるようにしていますね。
——髙屋選手の強みとは?
安定性ですね。ビッグプレーはしないけど、大きなミスもしません。あと、ひたむきにタックルするなど、泥臭さは負けたくないと思っています。というのも、自分は身体が大きいワケでもないし、足が速いワケでもなければ、キックやパスが上手いワケでもありません。その中で何ができるかといえば、確実にタックルをすること、人よりも速く起き上がって1.5人分の仕事をすることなんですよね。誰にでもできることだけど、意識していないとできないことを確実にやっていくことで、首脳陣やメンバーからの信頼を得られる選手になりたいと思っています。小・中学時代も高校も大学も、絶対的に強いチームではなくて、ひたむきに泥臭いプレーをしてみんなで強くしてきたチームでした。個人的にそんなチームが好きなんです。練習や試合が終わったとき、誰よりもジャージが汚れていたいですし、試合では泥臭いプレーの積み重ねから大きなプレーを成し遂げられたらいいと思っています。
——新人選手も入団してきましたね。
はい。4人入ってきましたが、3人は筑波大学出身ですし、古城選手もオール福岡で一緒にラグビーをしたことがあり、4人とも接点があるので楽しみですね。学生時代は1、2歳の違いが大きく感じたものですが、同じチームに10歳上の先輩がいるような環境では1、2歳の差って小さいものです。これまでとは関わり方も変わってくるでしょうし、仕事のこともラグビーのことも、さまざまなシーンで頼られる先輩になりたいと思っています。
——最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
自分は泥臭いプレーしかできませんが、そんなプレーをぜひ見て欲しいですね。試合後、ユニフォームがどれだけ汚れているかにもぜひ注目してください。
——ありがとうございました。