もっと知りたいヴォルテクス
もっと知りたいヴォルテクス#01 高井迪郎
2020.06.15
スタッフの考えをしっかりと理解し、選手に落とし込む——与えられた役割に責任を持って取り組んでいきたい
高井 迪郎(FL)
2012年の入団から9年目を迎えた高井迪郎選手。怪我に苦しみ公式戦の出場は2015年シーズンからという苦労人だが、今シーズンは4人による共同キャプテン体制の一人に選ばれるなど、チームを牽引する選手の一人だ。キューデンヴォルテクスへの想い、今シーズンの意気込みなどについて、話を聞いた。(取材日:2020年5月中旬)

2年ぶりにリーダーに復帰! 大きな責任を感じています。
——入団から8年が経ちました。今の率直な気持ちを聞かせてください。
今シーズンより赤間さんが指揮を執られることになりました。実は9年前、私をリクルートしてくださったのが赤間さんだったんです。私自身、ベテランの域に入ってきて少しずつ引き際を考え始めていましたが、お世話になった方が監督になられて、改めて身の引き締まる想いです。

——日体大時代から7人制日本代表に選ばれたりキャプテンを務めたりと活躍されていましたね。多くのチームから誘われたのではないですか?
はい。ありがたいことに、複数のチームに声をかけていただきました。その中でもいちばん最初に声をかけてくださったのがヴォルテクスの赤間さんでした。どのチームの方も、私のプレースタイルを褒めてくださったのですが、赤間さんは誰よりもその気持ちが伝わってきましたし、いち早く私に声をかけてくださったというのが何よりも嬉しかったことを覚えています。7人制日本代表時代に荒牧佑輔選手や同い年の正海智大元選手と一緒にプレーをしていて楽しかったですし、彼らと一緒にヴォルテクスでトップリーグ再昇格をめざしたいという想いもありました。また、出身校である大分舞鶴出身の選手が多く、子どもの頃に憧れていた選手と一緒にラグビーができることも嬉しかったですね。

——ヴォルテクスはこれまで様々な苦難を乗り越えてきました。その中にいて、どのような想いを抱いていましたか?
私が入団したときは、外国人選手がたくさんいましたし、環境面でも恵まれていたと思います。怪我の影響で殆どグラウンドに立つことはできませんでしたが、高校ラグビーや大学ラグビーとは全く違う、トップリーグで戦うチームならではの空気感に圧倒されました。2年目でトップキュウシュウに降格し、3年目で外国人選手が一人もいなくなってしまったのですが、4年目にはリーダーに抜擢されたんです。大変な状況でしたが、大袈裟な話、チームの存続なども意識しながらチームづくりに取り組んできました。2年前にリーダーを退いた後は、自分にフォーカスを当てて、いかにいいパフォーマンスを出せるかを意識しつつ、1、2歩引いたところからチームを見て、必要に応じて意見を伝えてきました。

——そんな中、今シーズンは4人による共同キャプテンの一人に選ばれました。
はい。赤間さんが監督に就任してコーチングスタッフも大きく変わることになり、私たちの世代が中心となって選手とスタッフのつなぎ役になって欲しいと言っていただきました。再びリーダーの打診を受けたときは、必要とされることの喜びなどよりも、ベテランの域に達している状況で任されることのプレッシャーの方が大きいと感じましたね。

——昨シーズンを踏まえて、ヴォルテクスの課題はどこにあると感じていますか?
昨シーズンに限ったわけではなく、スロースターターという課題はあると感じています。先制したゲームってあまり記憶に残っていなくて、先制されてからがスタートという試合が多いんですよね。このことに関しては、策を練って解決していかないといけないという強い気持ちはあります。
また、昨シーズンは余裕で勝てるはずの試合が接戦になってしまったり、勝てる試合を落としてしまったりしました。その原因は、トライを取るべきところで取れなかったというのがかなり大きいと思っています。自分たちが思い描いているアタックができているときもあるのですが、それがトライに結びついていないのは、やはりミスが多いから。ミスといっても、ハンドリングミス、コミュニケーションミス、判断ミスなどさまざまありますが、試合を通して全てがうまくいくことは絶対になくて、80分の試合の中で、起きてしまったミスをどれだけ小さくできるかというのが鍵になると思っています。
ミスの例としてノックオンを取り上げてみます。ノックオンが起こらないことが理想ですが、起こってしまった場合、私はその後ゲームにどう影響したのかを考えます。1つのノックオンで直接失点につながれば「×」、相手にボールを拾われ攻撃権は与えたものの、その後のDFで止めることができれば「△」、セービングで処理し相手ボールにはなるもその場からのスクラムに持ち込むことができれば「○」というように、同じミスでも影響度が大きく違います。少し細かすぎるかもしれませんが、このような考え方を持って1つのミスの影響をいかに小さくできるか、そこがポイントになると思いますね。

ラグビーができないことは精神的にしんどいけれど、今できることに集中するよう心がけています。
——高井選手は怪我で試合に出られない時期もありました。現在は新型コロナウイルスによって試合ができない状況です。こういったとき、どのようにモチベーションを保っていますか?
怪我というのは自分の責任ですから、怪我をしてしまった以上は、そのときできることに集中することを心がけてきました。一方で現在は、身体そのものの調子はいいと感じている中でラグビーができない状況です。週に一度、S&Cアシスタントコーチの吉田憲明さんからトレーニングの指示があるので、そのメニューに取り組んだり、できる範囲でウエイトトレーニングをしたり、在宅勤務の後に自宅の周辺を走ったりといったことをしています。怪我ではないものの、今できることに集中するという意味では、怪我のときと同じかもしれませんね。

——チームでの練習が再開したら、まずは何をしたいですか?
まずはウエイトトレーニングですね。フィットネスを重点的に鍛えていきたいと考えています。もちろん、今、いちばんしたいことはラグビーです。けれど、その前にやるべきことがありますからね。大学を卒業してヴォルテクスに入団するまでの数ヶ月、手術などもあってボールに触れていなかった時期はありましたが、今はその期間を超えています。精神的には正直しんどいですね。どうしてもラグビーがしたくなりますし、寝る前とか特に考えてしまいます。ラグビーの映像を見てしまうと気持ちが抑えられなくなるので、今はラグビーの映像を見ないようにして、冷静な気持ちを保つことを心がけています。

——ヴォルテクスの選手たちは社業と両立しながらラグビーを続けています。そのことについて思うことはありますか?
プロではありませんので、業務との両立はマストですね。シンボルスポーツとして会社を盛り上げる役割も担っていますので、業務とは別にラグビーを通して会社に貢献することを意識しています。職場の皆さんも理解があって、部署のどなたかが必ず応援に来てくださいます。練習がある日は少し早めに仕事を切り上げたりもしますが、「いってらっしゃい」「頑張ってこいよ」と言っていただけることは、とても心強く感じます。頑張っている過程も大事だけど、やっぱり結果を出すことで多くの方に認めてもらえると思うので、しっかり結果を出していきたいと思いますね。

——ところで、高井選手は「6番」であることにこだわりがあるとお聞きしました。その真意をお聞かせください。
自分自身、誰よりも6番の役割を理解し、誰よりも6番にプライドを持っているという自負があります。ポジションとしては、6・7・8番のどこでもできますが、中途半端にしたくないんですよね。一言で「6番」といっても、その役割はチームによって異なります。チョック(ゼイン・ヒルトンヘッドコーチ)が思い描くラグビーは、グラウンドいっぱいにボールを動かすラグビーです。その中で、自分でボールを持ち込んだり、チャンスをつくったり、ときにはトライを取ったりという役割を担う「6番」は、自分のキャラクターをいちばん活かせるポジションだと思いますね。

——「6番」でプレーするにあたって、どのようなことを意識していますか?
内側を見て外側の声を聞き判断することが大事だと感じています。私はもともと声が大きいのですが、チームを鼓舞する言葉だったり、プレーに関する指示だったり、試合中は80分間、常に声を出し続けることを意識しています。また、一方で、隣にいる選手との小さなコミュニケーションも大事にしているんですよ。大きな声と小さなコミュニケーション、そのどちらもなくてはならないものです。

目標はトップチャレンジリーグ優勝です!
——昨シーズン、久しぶりに外国人のヘッドコーチや選手が加入しました。チームに変化はありましたか?
チョックって、細かなことが凄く見えている方なんですよね。細かなことも丁寧に教えてくれるので、この年齢になってもまだ学べることがある、成長できるという実感があります。また、外国人選手たちは、自分たちが気づけていなかったことをプレーで見せてくれます。そして何より、4人がいるだけでチーム全体が明るくなりました。以前は、日本人だけでプレーしていることにもプライドを持ってやっていましたが、彼らは常に本気ですし、そんな彼らの姿がチームを活性化させてくれていると感じています。

——率直に、ヴォルテクスとはどんなチームだと感じていますか?
そうですね。ひと言でいえばクリーンなチームでしょうか。反則も少ないですし、正々堂々と戦うというのが、ヴォルテクスの文化の一つだと思います。また、泥臭さやひたむきさというのが、チームカラーとして根付いていると感じます。泥臭さやひたむきさがファンの方に伝わるような試合は、接戦や勝利につながっていると思います。

——昨年のワールドカップをはじめ、ラグビーに注目が集まっています。ラグビーの面白さはどのようなところでしょうか。
これまでラグビーとの接点が少なかった方にとっては、人と人がぶつかる瞬間の音が聞けるというのは相当新鮮だと思います。その音はラグビーでしか聞くことができませんからね。激しさや迫力は、ラグビー観戦の大きな楽しみではないでしょうか。また、ラグビーは常に進化し続けていて、プレーしていく中で、新たな発見があったり、新しいことができるようになったりというのは、とても楽しいものです。あとはやっぱり、仲間のために身体を張るところですね。中靏選手や児玉選手の身を挺したプレーは、一緒に戦っていて震えるものがあります。そのようなプレーが結果につながったときは、凄く嬉しいですし楽しいですね。

——最後に今シーズンの目標とファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
今シーズンについては、どのようなリーグで戦うことになるのかまだわからないのですが、まずは個人にフォーカスしてフィットネスを上げていくことから始めて、チームづくりが始まったらチョックが思い描くラグビーをしっかり理解してパフォーマンスとして出していくことをめざしたいですね。
ファンの皆さまに対しては、いつも応援に来ていただき、感謝しています。毎試合足を運んで声を掛けてくださる方の存在はとてもありがたいですね。怪我から復帰したときは自分のことのように喜んでくださったり、負けてしまった試合の後「おつかれさん」「惜しかったな」と声を掛けてくださったりと、力をいただいています。とはいえ、ファンの皆さんに喜んでいただくためには、「勝つこと」が重要です。「惜しかったな」ではなく「よかったね」「おめでとう」と言っていただけるよう頑張っていきますので、引き続き、応援よろしくお願いします。

——ありがとうございました。