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もっと知りたいヴォルテクス

もっと知りたいヴォルテクス#04 荒牧 佑輔

2021.10.06

ラグビーで培ったチームワークやコミュニケーション能力は仕事に活かされる。組織としての一体感があるときはいい仕事ができる
荒牧 佑輔(SO)
2011年の入団から11年目のシーズンを迎えた荒牧佑輔選手。入団1年目の開幕戦に先発出場して以来、コンスタントに活躍してきた荒牧選手に、ご自身のことや来春開幕する新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン」に向けての想いなどについて語ってもらった。(取材日:2021年7月下旬)

ラグビーでプロ選手になると覚悟を決めてから、ラグビーが楽しくなった!

——荒牧選手がラグビーを始めたきっかけを教えてください。
父の友人の息子さんが鞘ヶ谷ラグビースクールでラグビーをしていて、父に連れられ5歳のときに練習を見学しに行きました。私自身は野球をしたいと思っていたのですが、父はラグビーをさせたかったようで、気づいたときには鞘ヶ谷ラグビースクールに入団していました。正直、中学生くらいまでは渋々ラグビーをしていて、高校に入ったら野球をしてプロ野球選手になろうと思っていたのですが、よくよく考えてみると高校から野球を始めてプロに入るのかなり難しいですよね。私はプロスポーツ選手になりたかったので、ラグビーでプロになろうと覚悟を決めました。
——覚悟を決めて小倉高校へ。どのような高校時代でしたか?
福岡県には東福岡高校という巨塔のような存在があり、私たちはその東福岡高校を倒すために切磋琢磨していました。中学生の頃までとは打って変わってラグビーをすることが楽しかったですね。いちばん記憶に残っているのは、高校2年生のときの花園予選(全国高等学校ラグビーフットボール大会福岡県大会)です。準々決勝で東福岡高校と対戦し、自分のタッチキック1本のミスが響きトライを取り切れず、僅差で負けてしまいました。凄く悔しかったことを覚えています。
——大学は関東学院大学へ進学されました。どんな大学時代でしたか?
当時の関東学院大学は部員が160人ほどいて、高校とは比べ物にならない競争がありました。1年生のときは同じポジションのメンバーが15人いて、私は15番目からのスタートでした。レギュラーになるチャンスはいつ巡ってくるのだろうという状況でしたが、とにかくやるしかないと覚悟を決め、必死にラグビーに打ち込みました。私が入学する前の年に全国大学ラグビーフットボール選手権大会で優勝し、全国から実力のある選手が集まってくるチームでしたが、そのようなレベルの高いチームでも必死に頑張り続けることでレギュラーを掴むことができました。また、大学3年生のときに当時の7人制日本代表監督だった村田亙さんに声をかけていただき、私の7人制ラグビー人生がスタートしたのもこの時期でした。
7人制日本代表時代の写真(本人提供)
——荒牧選手にとって7人制ラグビーはどのような存在ですか?
自分の強みは持久力なので、その強みを活かせる部分もありました。また、展開が早いスポーツなので自分がプレーしていなくても見ているだけでワクワクします。日本代表として10カ国くらい遠征に行きましたが、全てが楽しかったですね。大学4年生のときに学生日本代表でポルトガルへ遠征に行ったのですが、そのときのメンバーには、高井迪郎選手、園中良寛選手、正海智大元選手がいたんですよ。11人中4人がヴォルテクスに入団し、一緒にラグビーをできていることは感慨深いですね。2016年のリオ五輪からオリンピック競技にもなりましたし、私自身もオリンピック出場をめざしていましたが、残念ながら叶いませんでした。けれど、出場したメンバーを観ると納得できるメンバーばかりですし、彼らと一緒にプレーできていたことは自分にとって大きな財産となっています。
——大学卒業後の進路については、どのように決めたのでしょうか。
関東の大学に進学したものの関東の生活が合わず、福岡に戻りたいという想いがありました。ありがたいことにいくつかのチームから声をかけていただきましたが、福岡のチームでいちばん最初に声をかけてくれたのがヴォルテクスでした。そのときの担当は大学の先輩でもある赤間さん(現監督)です。また、プロスポーツ選手になりたいとは思っていましたが、当時はまだラグビー界ではプロ契約の選手はそう多くはなく、社会人として仕事をしながらラグビーを続けていくイメージを持っていたので、ヴォルテクスへの入団を決めました。

トップリーグで戦った経験があるからこそ、ディビジョン1で勝負したいという強い想いがある!

——入団11年目を迎えました。印象に残っている試合はありますか?
前記事の浦選手と重複するのですが、2011-2012シーズン、トップリーグへの再昇格を決めたキヤノンイーグルス戦ですね。昇格するには4トライ以上、39点差以上をつけての勝利が必要で、正直、相当厳しい状況だと思っていたのですが、当日になると不思議とそのようなことを気にせず試合に入り、徐々に自分たちの思い通りに試合を進めていく中で、「今日は何をやってもうまくいく」という雰囲気になっていきました。いわゆるゾーンに入っていたのでしょうね。やってきたことを全て出し切ることができ、楽しい試合でしたし、この試合で昇格を決めたことでトップリーグを2シーズン経験することができました。このトップリーグでの経験があるからこそ、2021年1月に開幕する「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」でも、ディビジョン1でレベルの高い試合をしたいという想いにつながっています。
——トップチャレンジに降格し、日本人選手だけで戦わなければならない時期もありましたが…。
一時期、日本人選手だけになり、日本人選手だけで戦うチームであることを誇りにしようとしているところもありましたが、個人的にはあまり好きではありませんでした。外国人、日本人などは関係なく、個々に能力があり組織としてまとまっていれば強いチームになるはずです。今、日本の強豪チームには各国から有名な選手が加入していますが、外国人選手に頼っている感じがしないんですよね。日本人の選手のレベルも高く、外国人が10人いるチームに外国人4、5人で大勝してしまうんです。私たちは結果を残すことができなかっただけだと思いますね。
そのような中で2シーズン前からチョック(ゼイン・ヒルトンヘッドコーチ)や3名の外国人選手が加入してくれました。選手たちは個人の能力も高く、これまで私たちだけでは持ち得なかった考え方をチームに共有してくれます。また、チョックは戦術や分析など、今まで見えていなかったことを私たちに示し、新しい考え方を教えてくれます。私自身も勉強になっていますし、チームとしてのラグビーの能力のみならずラグビーに対する理解度が高まっていると感じますね。
——昨シーズンを振り返っていただけますか?
昨シーズンの最終戦、マツダブルーズーマーズ(現・マツダスカイアクティブズ広島)戦は、あの試合が最終戦であることがもったいなかったと感じています。というのも、ここ数年、僅差の勝負が多かったブルーズーマーズに対して、自分たちがフォーカスしてきたこと、各々の役割を全うすれば点差をつけて勝てることがわかり自信になりました。シーズン当初からその自信を持って戦うことができれば、シーズンを通しての結果は違ったのかなと思います。
ラグビーの試合は、一人ひとりに役割があり詳細に至るまでポジショニングが決められています。あとは個人の判断でさまざまなポジショニングを行なっていくわけですが、開幕の時点では自分の役割を認識できず不安を抱えている状態だった選手もいました。開幕時にピークを持ってくる必要はないけれど、もっと自信を持って試合に挑むことができていればよかったのではないでしょうか。

ラグビーで培ったチームワークやコミュニケーション能力が仕事にも活きている

——仕事をしながらラグビーもするということについて、どのように考えていますか?
入社して以来、ずっと意識しているのはスケジュール管理です。ラグビーの時間も必要ですので、仕事に関しては自分の業務がどれだけあるのか、期限はいつなのかをしっかり把握した上で、限られた時間内で成果をあげなければいけません。綿密なスケジュールをたてて優先順位をつけながら期限を守ることを心がけています。
スケジュール管理を意識するようになったのは、職場の方に迷惑をかけたくないという気持ちが大きいですね。ラグビーをしていなければ私が担当しているかもしれない業務も周囲の方がしてくださっているという意味では、既に迷惑をかけてしまっており、与えられた業務はしっかりとやり遂げなければなりませんし、自分に与えられた業務以外にもできることは率先してするという気持ちでいます。
——学生から社会人となり、新人、中堅となってきた中で、ご自身の中での変化はありますか?
大学時代は自分が試合に出場するために、「自分が、自分が」という感じでした。スタンドオフとしてチームを勝利に導くために何をするかは考えていますが、自分がAチームに上がるためには自分が目立たなければなりませんでしたからね。ヴォルテクスに入団してからは、個人のプレーだけではなく、この選手だったらこんなプレーが好きだからこんなパスをしようといった具合に、人を見てプレーを変えることを意識するようになりましたね。
また、大学時代までは年齢の近い選手しかいませんでしたが、ヴォルテクスにはかなり年上の先輩もいますし、仕事をしていく上でも先輩や上司など、年上の方と接することが増えました。そのため、人の話を聞く機会も増え、いいものを取り入れていこうとの思いから人の意見を聞けるようになりました。ラグビーで培ったチームワークやコミュニケーション能力は仕事に活かされることも多いんですよ。ラグビーも仕事も組織としての一体感があるときはいい仕事ができているんですよね。ラグビーはもちろん、仕事の面でも一体感が持てるようになりたいと考えるようになり、職場でもそのようなことを意識した声がけを行なっています。

選手一人ひとりの強みを発揮できるスタンドオフとしてスタメン出場をめざす

——2022年1月、新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン」が開幕します。開幕に向けて現在はどのような準備を進めていますか?
現在は個々の基礎的な能力にフォーカスし、一人ひとりの課題を意識しながら与えられたメニューに取り組んでいます。また、昨シーズンはフルバックとしてしか試合に出場できませんでしたが、やはり本業のスタンドオフでやりたいという想いが強いので、今シーズンはスタンドオフとしてスタメン出場をめざしていきたいと考えています。それを実現するためには、グラウンド内外でほかの選手たちとコミュニケーションを図り、それぞれの選手の強みを発揮できるスタンドオフとなれるよう頑張っていきたいですね。
——今シーズンの目標は?
一戦必勝ですね。また、ヴォルテクスは新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン」のディビジョン3からのスタートとなったため、まずはディビジョン2への昇格をめざします。
——最後に。ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援いただきありがとうございます。現在はコロナ禍で大変な時期ではありますが、そんなことも忘れてしまうようなワクワクするプレーを見せられるよう頑張っていきますので、今後も熱い応援をよろしくお願いします。
——ありがとうございました。