もっと知りたいヴォルテクス
もっと知りたいヴォルテクス#03 浦 真人
2021.03.29
これまでのラグビー人生で培ってきた経験をチームに還元し、チームが強くなるために自分ができることを考え行動することを意識しています
浦 真人(LO)
2006年の入団から16年目のシーズンを迎えた浦真人選手。入団1年目から大きな怪我をすることなく、コンスタントに試合に出場し続け、いぶし銀の活躍を見せ続けている。今シーズンはラグビー人生で初めてキャプテンに就任。今シーズンのこと、ラグビーへの想いなどについて語ってもらった。(取材日:2021年3月初旬)
地元・九州でラグビーに恩返しがしたいと、ヴォルテクスに入団!
——浦選手がラグビーを始めたきっかけを教えてください。
私は子どもの頃から身体が大きく、柔道や相撲からも誘いがありました。小学校3年生のときにラグビーをしている友人から「ラグビーやってみない?」と誘われたんです。野球やサッカーにも興味を持てずにいたのですが、ラグビーをしてみると楽しくて。それがきっかけで、引津リトルラガーズに入団しました。
——高校は県外に進学されたんですね。
はい。地元の高校と迷ったのですが、在校中に大分舞鶴が50周年という節目を迎えることを聞き、チームを強化していると聞き興味を持ちました。学校見学に伺ったところ、芝のグラウンドがあって、こんな環境でラグビーをしてみたいと憧れましたね。親元を離れて生活することには不安もありましたが、3年間だからいいかなと思って。といっても、それから実家で暮らすことは一度もなかったですけどね(笑)。
——高校時代で印象に残っている試合はありますか?
高校3年生のときの花園(全国高校ラグビー大会)ですね。なかでも準々決勝は忘れられません。大工大高(現・常翔学園)と対戦し、ロスタイムで逆転。勝利目前でしたが、ボールを蹴り出しゲームを切ったものの、思いのほかロスタイムが長く、逆転トライを許し敗戦してしまったんです。あの試合は思い出すだけで未だに悔しいですね。
——大学時代は大学選手権でも活躍されていましたね。
1年生のときはリザーブでしたが、1回戦で負けてしまいました。2・3・4年生のときはベスト4まで進んだものの、決勝を戦えなかったことは残念でしたね。とはいえ、子どもの頃から正月といえば箱根駅伝と大学ラグビーを見ていたので、その憧れの舞台に自分が立っていることに、不思議な想いと嬉しい気持ちが混在していました。
——大学卒業後の進路については、どのように決めたのでしょうか。
関東や関西のチームも含め10チームからお話をいただきました。ラグビーをメインに考えると、正直、ヴォルテクスではないなと思っていたのですが、生まれも育ちも九州ですし、九州に戻って恩返ししたいという気持ちが強かったんです。また、当時はプロ化がスタートしだした頃で、引退後の人生も考えましたね。関東や関西のチームでラグビーをした後、九州に戻って来られるのかという不安もありましたし。また、中学、高校、大学時代から知っているメンバーが入団することを聞き、彼らと一緒にラグビーをしたいという思いもありました。
与えられたポジションで、その時々の役割を考えてプレーする!
——ヴォルテクスはどんなチームだと感じていますか?
良くも悪くも“真面目”なチームだと感じています。いい面はグレーゾーンで勝負をしないキレイなラグビーをすること。それが弱い部分でもあるのですが、相手をリスペクトし過ぎてしまって、格上のチームと対戦するときに遠慮してしまいがちなんですよね。
——ヴォルテクスに15年以上在籍してきた中で、どのようなことを感じていますか?
いろんな選手とラグビーをしてきましたよね。入団した当時は外国人選手も10人くらいいて、オーストラリアやニュージーランドの代表クラスの選手たちとプレーできたことはいい経験でした。しばらくはトップリーグとトップキュウシュウを行ったり来たりしたものの、日本人選手だけで戦わなければならない状況になり、なかなか結果を残すことができませんでしたね。
そのような中でも会社がラグビー部を存続し、ラグビーをさせてもらえている環境に感謝し、自分たちは何ができるかを考えながら、ここまでやってきました。当時の監督やコーチは大変な苦労をされてきたことと思います。昨シーズンからチョック(ゼイン・ヒルトンヘッドコーチ)が戻ってきてくれて、外国人選手も加入。選手層も若くなり、少しずつですが、ヴォルテクスは変わろうとしていると感じています。
——これまでのラグビー人生で、記憶に残っている試合はありますか?
2011-2012シーズン、トップリーグへの再昇格を決めたキヤノンイーグルス戦です。前半が終了した時点でリードしていて、選手たちは“行けるぞ!”と感じていましたが、誰一人、そのことを口にしませんでした。目の前のプレーを一つひとつやっていくしかない、トライを積み重ねていくしかないという気持ちで必死にプレーしていたら、再昇格に必要な点数を獲得して勝利! あの試合を通して、何ごともやってみないとわからない、常にチャレンジし続けることの大切さを改めて実感しました。
——新人、中堅、ベテランと立場も変わってきましたが、ご自身の中での変化はありますか?
そうですね。新人の頃はとにかく試合に出たくて必死でしたし、トップリーグのチームに入るという選択肢もあった中でヴォルテクスを選んだからには、このチームで試合に出続けないと意味がないと思っていました。3年目に膝を怪我したものの半年ほどで復帰。それ以外は大きな怪我をすることはありませんでした。心がけていたことといえば、毎日水を2リットル飲むことくらい。肉離れなどの筋肉系の怪我をあまりしなかったのは、そのことが功を奏したのではないでしょうか。
30歳を超えてからは、さすがにウエイトトレーニングや身体のケアにも取り組むようになりましたね。また、若い頃はギラギラしていたので「負けたくない」「試合に出ないと意味がない」と思っていましたが、現在はキャプテンという立場にもなり、チーム全体のことを考えるようになりました。
もちろん、個人としては「負けたくない」「試合に出たい」という気持ちはありますが、若手選手も増えてきた中でチームのことを考えたとき、「自分がこのまま出続けていていいのだろうか」「自分が出ることで精神的支柱になりチームの方向性を導いていかなければ」といった、さまざまな想いが生まれてきました。
いろんなことを考えるようになったものの、チームの方向性を考えるのはヘッドコーチです。私は与えられたポジションで、その時々の役割を考えてプレーすることを心がけることにしました。
——具体的にはどのような役割になるのでしょう?
先発メンバーになったときは、ゲームをつくることを意識します。キックオフ後10分ほどはどのチームも元気があり、その時間帯に自分たちのカタチに持っていくことが求められます。セットプレーを安定させてゲームをコントロールすることを常に考えていますね。
また、リザーブで途中出場するときは、自分のチームにも相手チームにもインパクトを与えられることが求められます。ボールをもらいに行く回数を増やしたり、タックルをする回数を増やしてゲームに刺激を与えます。
一方、メンバー外のときは、対戦するチームを想定したチームや選手として練習相手になり、相手の特徴などを出場するメンバーに伝えたりもします。若い頃はチームよりも自分が前に出ていましたが、30歳を超えてからは「チームのために」ということを考え行動するようになりました。
良くも悪くも、自分自身の振る舞いがチームに与える影響が大きいことを考え行動しています
——今シーズンはどのような準備をしてきましたか?
来シーズンから新リーグが設立することになり、今シーズンは昇格や降格がありません。プレッシャーがかからない状況ですし、観客もいません(※3/13以降は有観客)。難しい環境ですが、そのような状況でも、結果を残すことが求められます。
ロックというポジションは1試合で2人出るため、もう1人の選手とのコミュニケーションが重要です。どの選手と一緒にプレーすることになってもいいように、練習中に一人ひとりの特徴を把握できるよう意識してきました。
——キャプテンとしてはいかがでしょう?
中学も高校も大学も副キャプテンでしたので、生まれて初めてキャプテンをしています。自分ではそう感じていなくても言葉や行動の影響力が大きくなっていますし、自分を律するようにもなってきましたね。とはいえ、正直なところ、チーム全体は高井選手がまとめてくれているので、私が何かをすることはありません。ただ、高井選手が困ったときは、私に相談してくることもあります。高井からは「ココぞというときは浦さんに頼みます」と言われているんですよ。
——トップチャレンジリーグの前半戦を振り返ってください。
全体的に悪くはないものの、ちょっとしたミスなど細かなところで流れを掴みきれず、ゲームを難しくしてしまっていたところがあったと思います。だからといって、マイナスの要因がたくさんあるワケではありません。準備してきたこともできるようになってきたし、細かいところを詰めていくことができれば、必ず勝利に繋がると思いますね。チームの雰囲気もいいですし、状態は悪くありません。違う先を見るために、残りの試合はすべて必ず勝ちたいと思っています。
——個人的には、どのような状況ですか?
身体がキツイですね(笑)。若い頃のようにいうことを聞いてくれず、回復にも時間を要してしまいます。といっても、調子が悪いワケではないですし、なんとかやれているのではないでしょうか。今も試合に出てチームに貢献したいという想いは変わりません。
ラグビーの魅力を九州の人々に伝え、子どもたちにラグビーをしたいと思ってもらえる環境をつくっていきたい!
——会社員としてラグビーを続けることに関して、考えていることはありますか?
ラグビーができる期間は、人生全体でみるとそう長くはありません。引退後の人生の方が長いこともあって、仕事をしながらラグビーが続けられる方がいいなと感じていました。入社したときは仕事をしながらラグビーを頑張ろうという想いでこのチームを選びましたから。
振り返ってみると、ラグビーと並行して仕事の経験を積んでこられたことはよかったと想いますが、やっぱり職場の皆さんから応援していただくことが大事なんですよね。私たちがラグビーを続けられるのは、職場の皆さんの理解があってこそ。応援してもらうためには、職場に貢献することも必要ですし、後悔はないけれど、しんどいところもありましたね。
私たちはプロ選手ではない中で、プロ選手と同じ土俵で戦い結果が求められます。ラグビーは自己犠牲の精神で成り立っているスポーツです。私たちがラグビーをしていることの意味は何なのか、ラグビーを通して会社に貢献できることは何なのかということを、最近よく考えますね。そのような状況の中で、試合で結果を出して今の環境を少しでも変えていきたいと考えています。
——ラグビーワールドカップ2019もあって、日本のラグビーも盛り上がっています。率直にどのように感じていますか?
私が子どもの頃はラグビーはメジャーではありませんでした。小学生のときに見たワールドカップではニュージーランドに100点以上の差を付けられて負けていましたし。けれど、2015年には南アフリカに勝利して3勝1敗という結果を残したものの決勝トーナメントに出場することができず。2019年は4勝して決勝トーナメントに進出。代表選手たちは自分たちはできると信じて必死にやり続けたことが、結果としてカタチになりました。次の大会はさらに上のベスト4が目標になると想いますが、代表選手たちはそれを目指して頑張ってくれることと思います。
一方、私たちはラグビーの魅力をこの地域の多くの人たちに伝えることが使命です。子どもたちにラグビーがしたいと思ってもらえるような活動を通して、野球やサッカーのようにもっと身近なスポーツになるようにしていきたいと思っています。そのような活動をしていくことが、会社への貢献にもつながっていくと思っています。
——最後に。ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援いただき、ありがとうございます。コロナ禍で不自由な生活が続いており、まだまだ先が見えない状況ですが、ファンの皆さまにラグビーで明るい話題をお届けしたいと思っています。グラウンドでお会いできる日を楽しみにしています!
——ありがとうございました。