登山に始まり、レンジャー素養試験、そして断郊走という休む間もなくハードなメニューが続いた1日目を終え、選手たちは22時には各部屋に戻り、翌日に備えました。そして 2日目は、“非常呼集”から始まりました!
5時45分、班ごとに割り振られた宿泊部屋のドアが勢いよく開けられ、隊員が入室と同時に部屋中に響き渡る音量で笛を鳴り響かせます。ぐっすりと眠りに落ちていた選手たちは、起き抜けの出来事に状況をつかみきれない様子。しかし、有無を言わせぬ雰囲気の隊員を前に急いでチームジャージに着替え、取るものも取りあえず建物前に集合します。
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前日の疲れも残る体を引きずり、何とか起きだします |
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隊員の見守る中で素早く準備
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班ごとに点呼がされ、準備運動をして体をほぐした後はランニングが始まります。徐々にペースが上がっていき、隊員の掛け声に合わせてみんなで声を出しながら連なって走ります。隊員の方の話によると、走りながら掛け声をかけるのは過酷な訓練の中、走っている途中に意識をなくすのを防ぎ、折れそうになる心を奮い立たせるためだそう。このランニングでも、声を掛け合うことで一体感がうまれ、選手たちも自ら声を出すことで自分を鼓舞し、受け身ではなく挑戦する心にかえていこうとする様子が見てとれました。
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班ごとに点呼
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準備体操をして体を目覚めさせます
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まずはウォーキングから、徐々にペースを上げていきます |
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隊員の掛け声に合わせ、全員で声を出しながら走る姿は壮観
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駐屯地の敷地内を30分間ほど走った後は、班ごとに再び部屋に戻って朝食をとり、午前中に行われるロープ訓練の設備のある場所に移動します。
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ロープ訓練場所へ |
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体験にあたっての説明を受けます |
ロープ訓練ではまず隊員から見本を見せていただき、その後に選手たちも実際にロープを使った降下訓練を体験しました。川や谷を渡る際に行うという高所でのロープをつたっての移動では、はるか高いところを無駄のない動きで素早く渡っていく隊員に、選手から「おぉ〜!」と声があがります。その後、選手も挑戦することになる10mほどの高さから急こう配の坂を下る演習をみせてもらいました。
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素早く渡っていく隊員 |
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驚きの表情で見上げる選手たち
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坂を下る演習 |
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いくつかの方法を見せていただきました
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早速、各班の代表者と希望者がロープの結び方のレクチャーを受け、挑戦します。10mといえども、実際に上から見下ろしてみると足がすくむほどの高さです。緊張した面持ちで慎重に下っていく選手、迷いなくすいすいと慣れた様子で下っていく選手など、人それぞれ。
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命綱となるロープの結び方を教えてもらいます |
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レクチャーを受ける早田選手
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ロープを結んでいよいよ降下 |
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雨で滑る足場に、目を見開く佐藤選手
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「レンジャー!」といいながら、安定した降下を見せた吉浦選手 |
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吉永選手も高所作業員のようなはまり具合です
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ひとりずつの降下訓練が終わった後は、後ろにケガ人を背負う状況を想定して、2人での降下に挑戦です。ケガ人役で背負われている人は、背負っている人とロープで固定してあるものの、自分は足が宙に投げ出され、まさに命を預けている状態。降りる人同様、緊張感のある表情をみせていました。
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マクベリー選手に背負われた久保選手 |
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「もう少し左に!」と隊員から声がかかります。
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廣畑選手に背負われているのは本多選手 |
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廣畑選手の足がすべり、思わずしがみつく本多選手
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隊員がロープですいすいと降りてきた高さまで登ってみた選手たち。地上の人が小さく見えます。 |
恐怖心を感じる中でも果敢にチャレンジし、余裕のない場面でも冷静さをもって状況判断をすることを体験できたロープ訓練となりました。
そんなロープ訓練を終えた後は、今回の合宿最後となる食事をいただきました。合宿中は常に冷たい雨が降り、寒さとの戦いでもあった中で、温かい食事は冷えた体を温め体力を回復させてくれ、いつも以上にありがたく感じました。
午後からは、駐屯地にある武器を使って、隊員の方からひとつひとつ説明をしていただきました。実際に触ることができる武器を前に、選手たちは少年にように嬉々として写真を取り合っていました。
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隊員の方に武器の使い方などを説明していただきました |
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マクベリー選手とドハティ選手 |
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黒木選手
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外では、イラク復興支援の際に使われたものと同じタイプの車で、現在海外でも活躍しているという軽装甲機動車、通称“ラブ”と呼ばれる車両に乗り、駐屯地の敷地内を走行してもらうという貴重な体験もさせていただきました。
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至るところに安全、そして戦うための工夫が凝らされている“ラブ” |
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車体の重さで、少しの道の凹凸にも大きく揺れます
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その後は連隊長から話をしていただき、陸上自衛隊の歴史や隊の編成、その中で別府駐屯地の担う役割、そして陸上自衛隊の今後のビジョンなどについてスライドショーを使ってわかりやすく説明していただきました。また、陸上自衛隊が行っている訓練内容の紹介では、選手たちも一部体験しているだけにその大変さが身をもってわかり、興味深く耳を傾けていました。
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講演の風景 |
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連隊長「普段はみなさんには見えにくい仕事ですが、 関心を持っていただければと思います」
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最後に隊から配られたアンケートに記入し、いよいよ2日間とは思えないほど充実し、長く感じた合宿を締めくくる訓練終了式へとうつりました。
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アンケートに記入しながら、盛りだくさんだった2日間を振り返る選手たち |
訓練終了式では、今回の合宿を担当していただいた第4中隊長から再び話をしていただき、その中で「人差し指と親指で輪を作り力を入れる場合と、それが鉄の輪だとイメージする場合では発揮できる力が違うので近くの人とやってみてください」といわれ、選手たちも早速挑戦。強くイメージをすることによって自分の体の力が意識する以上に発揮できることを体感しました。「イメージする力はとても大事。そして自分たちがひとつになったらもっと力が出る。上を目指す中できつい時もあるが、仲間を、そして自分を信じて、九州を代表するチームとなって欲しいです」と激励の言葉をいただきました。
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敬礼も板についてきました |
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第4中隊長から激励の言葉
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“鉄の輪”とイメージするとなかなか開きません |
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選手たちも実際にやってみました。
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一段と精悍な顔つきになった選手たち |
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見送りをしていただいた隊員とがっちり握手する中村キャプテン |
バスに乗り込むと、見送りにきていただいた隊員の方々から「ヴォールテックス!」とコールがわきあがります。選手スタッフ一同みんなで手を振りながら、ヴォルテクスの次なる戦いの場所に向けてバスは発車しました。
合宿の2日間、先の見えない精神的負荷と、隊での個人よりも全体が重視され絶対的に規律を守ることが求められる慣れない環境の中で、選手たちはその状況を前向きにとらえ、どんな時でも楽しむ心を忘れず、臆することなくチャレンジし続けました。その中でつかんだチームとしての一体感を決して手放さず、リーグ後半戦も新たな覚悟を持って挑んでいきたいと思います。
今回合宿をさせていただくにあたり、ご協力をいただきました陸上自衛隊第41普通科連隊第4中隊隊員の皆さま、広報班の皆さま、また、自衛隊大分地方協力本部関係者の皆さまに感謝の意を申し上げます。苦しい状況の中でも隊員の方々の揺るぎない姿勢に励まされ、的確な先導によってケガなく無事に全行程を終了することができました。ヴォルテクスがチームとして成長するためにと力を尽くしていただき、たくさんの激励の言葉をいただいたご期待に添えますよう、これからも邁進してまいります。ありがとうございました!
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![秋季合宿日記−2日目− 大坪 弘明](img/mtit01.jpg)
携帯電話のやさしい着うたで起床するつもりでした。
入口のドアが突然開いた音と同時に鳴り響く甲高い笛の音で目が覚め、状況の把握ができないまま、棚の上に置いていた眼鏡を何とか掴み、外に向かって駆け出しました。
寝起きの弱さにつけこんだ…いやいや自衛隊生活体験の最終日は5:45(まるごー よんごー)に始まりました。
訳がわからず外に集められ、点呼と朝礼が始まり、更には全員で大声を出して合唱をしながらのランニングを終え、ようやく宿舎で朝食のラスクを食べたのでした。
その後も、ゆっくりと過ごす時間もなく、次の訓練場所へと移動しました。
高さ30m近い高所から、ロープ1本で急降下する訓練や鉄塔間に張られているロープを渡る実演を見て、「根性試しする前に、死ぬんじゃないか?」と凍りつきましたが…、
やるのはその横の10m少々の高さから、ゆっくりと降下する訓練で安心しました。
これは、普段から胴綱1本で揺れる電柱に登っているし、高さも同じ位だからという理由で、恐怖心もなく降下できました。
その後は、自衛隊で使用する武器や車両の紹介・講義などが行われ最後まで充実した時間を過ごすことができました。
今回の合宿の最初に説明を受けた、「誰かのために汗をかけ!」や、「状況を楽しめ!」という言葉の意味を考えながら、厳しい境遇下になると自分のことだけを考えがちになり、周りの状況が見えづらくなり苦しくなるものですが、団体(チーム)においては、皆が同じ境遇であり、同じ思いをしているということを忘れてはいけないと勉強させられました。
実際にそれを体感し、助け合いながらその状況を楽しむことが、より結束力を高めるのだと感じました。
トップリーグ昇格までの数試合、ここで体感したことをチーム力として発揮し、目標に向けて頑張りたいと思います。
最後に、別府駐屯地 第4中隊を始めとする関係者の皆さま、本当にお世話になりました。
敬礼!
PS:バスの見送りの際の「ヴォ〜ルテックス」コール、ありがとうございました!
「チュ〜トンチ!」
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写真右が大坪選手 |
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