ヴォルテクスは10月8〜9日の二日間、チームの一体感を高め、一人一人の意識改革とメンタル面、フィジカル面の強化を目的としてチームビルディングの秋季合宿を実施しました。今回の合宿はより困難な状況を作り出すために選手にはあえて行き先や練習内容、詳細なプログラムを告げずに決行しました。そしてその舞台となったのは陸上自衛隊別府駐屯地。第41普通科連隊第4中隊隊員の方々の協力を得て、これまでにないほどハードで非日常的な体験をチームで共有することができ、チームとして心をひとつにすることの大切さを体感し、仲間、そして自分を信じたときに発揮できる揺るぎのない強さを再発見し、一人一人が決意を新たにする2日間となりました。
合宿1日目、7時45分に香椎競技場に集合した選手たちは行き先を告げられぬままバスに乗り込みます。そして2台連なったバスは大分方面へ向かい、約2時間の道のりを経て、いよいよ別府駐屯地に到着。ここで7つに分けられたチームと班長が発表され、チームごとに宿泊場所となる各部屋に案内されました。
迷彩服の隊員たちに見守られ、館内へ入ります |
班ごとにわりあてられた部屋の様子
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部屋に荷物を置いて再び集合し、配られたおそろいの帽子をかぶった選手たちは簡単に敬礼のやり方を教えてもらい、早速“隊内生活体験開始式”が行われました。式では中村キャプテンから挨拶をしたあと、選手一同で敬礼。そして本合宿でお世話になる隊員の方々を紹介していただき、滞在するにあたっての注意点や2日間のプログラムが簡単に説明されました。
隊員「敬礼は手のひらを見せないように、 手を目と帽子の間に持ってきます」
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中村キャプテンが代表して挨拶
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全員で敬礼 |
今回お世話になる第4中隊の皆さん
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レクチャーを受ける選手・スタッフ |
そして式の最後に、今回ヴォルテクスの生活体験を担当していただいた第4中隊長から「『誰かのために汗をかけ』、これが訓練の時に隊員たちが心がけること」という心構えが伝えられ、それまでの和やかな雰囲気とは打って変わって「お客さま扱いはここまで。5分後、班ごとに並んで外に集合!」と伝えられ、いよいよ訓練が始まります。
今回、担当していただいた第4中隊長 |
引き締まった表情を見せる選手たち
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まずは生活体験をする間に必要となる基本動作の練習です。最初に隊員の方に見本を見せてもらい、全体で練習したのち、班に分かれてそれぞれ号令をかけ、実際に体を動かしながら細かく指導を受けました。
隊員の方の見本を見て学びます |
細かく指導が入ります
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班に分かれて基本動作を繰り返し、体に叩き込みます |
徐々に動きがそろってきました
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どんどん雨脚が強まり、基本動作の訓練が終わったころにはすでにびしょ濡れの選手たちはそのまま食堂に移動し、昼食をとりました。限られた時間の中で言葉少なにもくもくと食事を平らげ、次のプログラムにそなえます。
すべて班行動、食堂へも並んで入ります |
食事をとる選手たち
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食事の後はいよいよ本合宿最初の関門、扇山の登山です。今回はケガ人以外の選手たちはみな20kgのおもりを背負い、負荷をかけての登山となります。“20kg”というと、2リットル入りペットボトル10本分を想像していただくとわかりやすいでしょうか、普通の人ならなかなか片手ではもてないほどの重さです。“背のう”と呼ばれる布のリュックにおもりを入れた選手たちは、その重さに立っている時も自然と前傾姿勢になります。
背のうにおもりを入れる選手たち |
しっかり固定します
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ずっしりと肩に食い込みます |
バランスをとるため、前傾姿勢になる選手たち
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隊員、そして班長を先頭に出発 |
一列になって進んでいきます
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ふもとから見ても傾斜の激しい扇山 |
登り始めて1時間後、霧が山を完全に隠しました。
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途中からたちこめた濃霧、そして降り続く雨のために非常にすべりやすくなった悪路の中、チームで声を掛け合いながら、折れそうになる心をなんとかつなぎとめ、互いに励まし、頂上を目指します。
前の人から離れないように、ただただ必死に歩きます |
足場の悪い場所も多く、気が抜けません
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休憩中 |
急な傾斜が続きました
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頂上にて、班ごとに記念撮影 |
監督をはじめ、スタッフも登りました
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下りは特に足を取られ、みな泥だらけに。 |
眼下にはこんな景色が広がっていました
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約3時間の登山を終え、地上にもどったころには疲労で顔から表情が消えていた選手たち。しかし休む間もなく、そのまま「レンジャー素養試験」の行われる場所へ移動します。レンジャー素養試験はその名の通り、自衛隊でも最も厳しいといわれる“レンジャー”になるための素養をテストするプログラムで、「私語禁止!」と隊員の声が飛ぶ中、ピリピリとした緊張感のある雰囲気で行われました。
下山したその足で移動 |
準備運動
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ここでは懸垂、腕立て、腹筋、そしてかがみ跳躍の4種目それぞれの平均点がチームごとに出され、チーム対抗で数を競います。今回はまず隊員が良い例と悪い例の見本を見せ、正確な動作以外は認められないという正確性が求められるテスト形式で実施されました。登山で全身にかいた汗が冷たい雨で冷えていき、立っているだけでもどんどん体力が奪われる中、どうにか集中力を保ち、目を光らせる隊員の前で実施するというプレッシャーに耐えながら与えられた課題にひとつひとつ取り組んでいく選手たち。
最初から最後まで緊張感が漂う雰囲気の中、進行されました |
それぞれの種目の前に、隊員が良い例と悪い例を見せます
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目の前に立つ隊員がマンツーマンで実施数をカウントしていきます。 |
腕立て
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腹筋 |
かがみ跳躍
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言葉を発することも禁じられ、互いに励ましあうこともできない厳しい状況の中で自らを鼓舞し、チームのために最善を尽くすという個人の精神力が問われるプログラムとなりました。全身ぐっしょりと雨に濡れ、寒さに肩がすくみ、思わずガタガタと震える選手たちを次に待つのは、本日最後の山場、“断郊走”です。断郊走とはチーム単位で競うタイムレースで、チーム最後の人がゴールを切った時間がそのチームのタイムとなるチームワークが求められる競技。そして今回はどれくらい走るのか、その距離もかかる時間も知らされない精神的負荷の大きい状況の中、班ごとに1分間の時間をあけてスタートしていきました。肉体的にも疲労がピークに達したタイミングでの断郊走でしたが、選手たちはひたすら前を向き、ゴールを目指して走り続けました。
スタート地点に並ぶ選手・スタッフ |
ペースをコントロールしてフォローしあいながら進みます
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| 最後は隊員たちが出迎え、声援を送ってくれました |
その後やっとありつけたシャワーで汗を流し、夜は隊員の方々と夕食を囲みつつ「意見交換会」を行いました。一日行動を共にする中で互いに信頼感を得ていた選手たちと隊員の皆さんは、日中とは違うくつろいだ雰囲気の中で、つかの間の交流を楽しみました。
「予想していた以上に過酷だった・・・」と選手からも感想が聞かれた長い長い一日が終わり、すっかりやり遂げた感を漂わせていた選手たちでしたが、合宿は明日へと続きます!
10月8日午前7時45分。内容はおろか、行先すら知らされないまま、私達は大きな不安だけを抱きバスに乗り込みました。
香椎を発ってからちょうど2時間、大分自動車道別府ICで高速を降りて間もなく、私達の乗ったバスは目的地に到着しました。
「あーね。そういうことですか・・・」今回の合宿地。【陸上自衛隊別府駐屯地】
宿泊施設に入り着替えを済ませ、訓練開始式で日常とは違う空気を感じた後、早速訓練に入りました。
・12:30〜15:30 扇山登山
別府駐屯地の裏手にある扇山。標高792mとそんなに高い山ではありませんが、この扇山を20kgの背のうを担いで登りました。上りは腰がパンパンに張り、下りは膝がガクガクになりと、精神的にかなり追い込まれる訓練でした。途中リタイアしそうになる部員もいましたが、そんな時に仲間のサポートや励ましの声が起こり、そこには自然と一体感が生まれました。
・15:30〜16:30 レンジャー素養体験
陸上自衛隊にはレンジャーといって、戦闘時に第一線で敵部隊に突入するエリートがいます。そのレンジャーになる為の試験の一部を体験させてもらいました。内容は簡単。
「腕立て・腹筋・懸垂・スクワット」これらを限界までやり続ける。扇山登山の後、降りしきる冷たい雨、能面の如く表情一切変えないレンジャー教官のプレッシャーを全身に受け、軍隊映画のよくあるシーン(泥まみれでヒーヒー言いながら腕立てとかするやつ)みたいになってました。
・16:30〜17:30 断郊走
まだまだ終わりませんよ(涙)。既に精神的にも肉体的にもギリギリの状態で、今度は距離も時間も知らされないまま駐屯地敷地内をひたすら走りました。いつ終わるのかわからない状態で自分を追い込むことの肉体的・精神的不安というのはかなりのもので、何度も心折れそうになりましたが、共に走る仲間達と声を掛け合い互いに鼓舞し合うことで、また、他の隊員の方々の沿道での声援のおかげで全員がゴールすることができました。
今回、非日常的な体験をすることで、部の一体感や、メンタル面、肉体面で自分自身大きな成長ができたと感じています。この経験をトップリーグ再昇格に向け、活かしていければと思います。
最後に、どこに行くのかわからないまま、頑張ってこいと送り出していただいた職場の皆さん、そして合宿中私達のお世話をしていただいた第41普通化連隊第4中隊隊員の皆さまに感謝したいと思います。ありがとうございました。
班長を務めた齊藤選手(写真右下) |
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